えーと ぼくは やきもん屋です すでに 30年も この世界にいる なので どこでナニ見ても ベンキョウしてまう 存在は意識を規定する とはマルクスの言葉 やきもん屋はやきもん屋の意識で すべてを見る やきもんを通して 世界と出会う それはぼくのシアワセ 大峯奥駈道 全山踏破するために 初日の晩に 泊まった吉野山の民宿 宝山荘太鼓判 終夜 はげしい雨音を聞く 明けて止む 風は東より 天候は回復基調 吉野山を 雲がのぼって行く 朝めし6時半 前の晩はビールとか飲んでたんで意識せんかったけども 朝めしの器を見てて この民宿のこと気にいった
ふーん・・・ 機械量産の磁器ばっかり 絵付けも機械でプリント そやけど 取り合わせに 気ぃ使こてくれたぁる なかなかエエやん ご飯茶碗 磁器やけどグレー そこに胡麻状に鉄粉のよごし ご飯の白さが引き立つわなぁ シシャモの皿 ありゃ サーブが逆 アタマは左やないと しかし程度のいい 祥瑞:しょんずい(細かい文様の様式) 呉須:ごすの色のシブさがええやん 転写やねんけども こげたシシャモと よー合うた渋みのある青 香のものの皿 はなんちゅーか 量産の典型 注入鋳込み ぼんやりした灰色 そこにパキッとした黄色とミドリ 吉野杉箸の木目 すがすがしい 青磁荒波文の皿に だし巻き玉子の黄色 ショウガのピンク キンピラごぼう 陶器に見せかけた強化磁器 有田の品 ふーん こーゆーでこぼこの型もんに 転写シールで 民芸調の上絵風下絵 こーゆーこともできるんやなー 機械もんで・・・・ 湯のみ スッキリした呉須の線文 もともと 一泊¥6300の民宿 どんな器で出てきても 文句は言えへん 一食2万円とる 懐石料理屋やないねんからねー ここは嵯峨野吉兆でも招福楼でもない 吉野山の民宿 手づくりの器なんて望むべくもない 手づくりの器なんて使えるはずもない 高いから 機械量産の磁器 それも安手のもん使うしかない そやけどそれでも 差 が出るんやなぁ・・・ キモチどー使うか この民宿 表はうどん屋 たべもん屋 カレーもある オムライスもある 吉野山の上のほう 同宿者は長野から泊り込みに来てる 工事関係者が6人 裏の窓から 下千本 中千本 上千本 の桜が見える キモチ使こてくれたはる民宿 文化 ってこーゆーことやと思う 目で食べる日本料理の食文化 を次の世代に伝えるのは こーゆー気ぃ使いのヒトのやってる店 その器の使い方 そして 家庭食器 ぼくは そこをやらしてもろてる 食後 コーヒーが出た ほらー 気ぃ使こてくれたはる あー 松の文様に 縦のラインが竹に見える あー オレやったら どっかにちいさい 梅文 入れて 松竹梅に持っていくねんけどなー くどくなく あっ 飲み切ったら 底に 梅文がポツンと 一個とか 持ち上げたら 皿中央に ポツンと 一個とか・・・ 全身やきもん屋 全身全霊で 四六時中 やきもん屋 出発は7じすぎになった この日から本格的な山歩き 山々を越えて 熊野本宮まで行くぼくを おやっさんと奥さん 門口に立って 見送ってくれた お気をつけて と 奥駈道3 芭蕉と西行 |