| ’92年にびわ湖の東側に位置する山間の里、滋賀県永源寺町に移って来ました。 「愛郷の森」という名で町がやってるキャンプ場の中の清流、渋川のほとりに工房を
 持ちました。その前の7年間は 隣の蒲生町の10畳の掘立て小屋でやってたので、夢
 みたいに理想的な環境で仕事ができます。
  四季の自然、雪月花、花鳥風月に満たされて、日々目にするすべてのものから栄養をもらって、作る焼物が良くなってゆくのが念願であり、僕に出来るささやかなお返
 しです。
  京都の短大で油絵を学んでて、京焼の窯元に絵付師として入り6年。そのあとの2年は韓国、越前、美濃、益子で京焼とは違う焼物の美を学びました。焼物、陶芸のおも
 しろさは幅が広く、奥行き深く、あきずに一生おもしろがって仕事してゆけそうです。
  展示会に来て下さった方が「私は焼物は分りませんので…」などと言われるのですが、もっと気楽に「好き、嫌い」で見てもらっていいんです。
 いろんな工芸の中で陶芸だけが茶道の主役やからか、変に重んじられ過ぎて、恵まれ過ぎてますね。もっと、気楽に焼物を見て下さい。選ぶ人の側に美の基準はあるんで
 すから。美は見る人の目の中にあるんですから。
 それから工芸ってものは、人が日々の暮しの中で使う道具ですから、気安く使えないほど高い焼物は工芸ではなくて美術工芸品です。ぼくは美術工芸品ではなく良い工芸
 を生み出す職人でありたいと思ってます。
  それは左官屋さんが良い壁を塗りたい、農家の方がおいしい野菜を作りたいと思うのと同じことです。ですから陶芸家だとか先生だとかじゃなくて焼物屋のオッチャン
 です。あのオッチャンの作るもんはどつかオモシロくて、なんか芸があるていうか味
 があるなあ…。そう言われるのが一番うれしいです。
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