| 今回の窯で焼いた品々。大阪の陶芸教室の生徒さん達の品がほとんど。
 
 ぼくのは左隅の黒い備前土の品と、ほかに地蔵や仏が13点、それと火床の変形花器が9点だけ。 赤いパン箱に入ってる分は、中第一列あたりに入っていて、焼きが甘すぎる(温度低すぎる)ので灯油窯で焼き直しました。 
   温度は1280、酸化焼成、10時間。灯油窯は早いよねー。この焼き直し、けっこう色良かったンで、ちょっとおどろき。
 でも焼き直しは善し悪しビミョーなんですよ。もしその品が甘い焼きでも使えるところまで焼きしまってて、土味の良さが出てるなら、焼き直ししないほーがいいかな。
 でも甘過ぎて、食器としての耐久性を重んじるなら焼き直しかける。すると白い色と緋色のコントラストが強くなってインパクトあるけど、中間のトーンがなくなってしまう。不自然なカンジ。 まっ、考えようですね、『実用』と『どこに美を見るか』のあいだでの判断です。 この手の粗い土を穴窯で焼き締めた陶器は吸水性が高い。高級な懐石料理の店などでは食材を盛り込む直前30分、水につけて充分に器に水を含ませてから料理を盛りつける。
 こーしないと、乾いた器が料理の汁や油を吸い込んでシミになったり、匂いがついたり、カビがはえたりする。 使い終わったらすぐに引いて、きれいな水につけてしみ込んだ分を流れ出させて、洗い、完全に乾かす。 でもー・・・家庭で使う器にそこまでのことやってください、とは、いま言えんでしょー。
 こういったことちゃんとやれるのが『上流』ということ、キョーヨーある家庭婦人の心得ごとでございますわよ・・・こんな『家庭画報』風の暮らしのなかで生きてるンやないもん。
 こんなんは過去のことでしょー。今のくらしのなかでフツーのヒトが穴窯で焼いたエエ土味のやきもんを使こて楽しんでくれはらへんかったら・・・
 次の世代にこの文化伝えられへんでしょー。
 なので穴窯で焼いた品はぜんぶ『水止め』する。 
 この液体セラミックは2リットル¥6300。人畜無害、無臭、サラサラした水状でほかの水止め素材(シリコーンなど:トルエンをふくむ)よりユーシューです。 でも『水止め』も不自然なんですわー。水の玉がコロコロころがってしまう。
 してないやつは土がしっとりと水をふくむ。
 その風情がそこなわれる。
 だから懐石料理屋さんからの注文におこたえしてたときは「水止めしますか」「いや、やめといてください」でした。でも信楽のお店で買ってくださる、ぼくが顔をみることのできないお客さま向けには『水止め』するしかないかと・・・
 必ず苦情が出るだろうし、お店が困らはるしねー ムズカシーですねー、やきもの文化の伝承は・・・
 さて『直し』 
   火床のもんは道具土の目打ちが融けた灰でくっついてたり、倒れてとなりの品もンとひっついたりするんで、
 サンダーで摺ったり、切断したり・・・手間かかりますわ。
 つかうヒトのお手にケガがないようにしあげること。 くっついた品、はがすとカケができる。左のピッチャー(陶芸教室作品)の筒中央部には5ミリほどの穴があき、まわりにだ円すりばち状のカケができてました。
 なので・・・瞬間接着材(ゼリー状)をカケた面にぬり、
 エポキシ系の空間充填材をねってはりつけ、
 固まったらサンドペーパーをかけ、
 鉄に塗るようなフツーの金色ペンキ塗る。
 これがうちの『直し』の手口です。 エポキシ系の空間充填材はフロの目地の修理に使ったりするもんで、粘土状(直径2,5×14cmの筒状)。必要な分をちぎって練りはじめると固くなります。速乾タイプがいい。住友とかボンドとか各社から出てて、ホームセンターで売ってまーす♪
 金色ペンキは古びても穴窯で焼いた信楽土の緋色/火色とよー合います♪
 まっ、本格的な『金継ぎによる直し』もいいんですけどね。メンドクサイことはキライなんでー、ぼく。
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