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 おみど河原に ひろい竹やぶがあって そのふちに おおきい松の木があって そのしたを通ると つるべ落としが出た---
 『つるべ落とし』のハナシは多いなぁ 人を木の上にさらう・・・とも云うし気味の悪いモンが木からさがって落ちる・・・とも云うし
 むかしの人は闇におびやかされて生きてたんやろ電気がなかった時代。『おしん』の子供の時代。
 闇のなかにそびえる大きな木には闇のエキスが寄り集まって
 『人ならぬモノ』になっていったんやろう
 怖れのかたち、つるべ落とし。
 闇は「人の支配のとどかない世界」「魔」であり『人ならぬモノ』の世界だった。
 夜の山 夜の川 夜の池・・・ 闇がつややかに暗く魔物たちの世界がトクトクと息づいていたころは
 『人ならぬモノ』への恐れが人をむすびつけていた
 『人ならぬモノ』への怖れを口にすることで人は教育され文化を共有し、伝承し、
 その文化のなかで生きることをくり返せた
 電気の光があまねく夜をてらし『人ならぬモノ』の世界がなくなると夜は「魔」ではなくなって、つややかさを失い
 たんなる「日没から日の出まで」の時間に堕落してしまった。
 そして人は「人であるだけ」になった 人は人であるだけで「仲間」だったのに『人ならぬモノ』はもういなくなってしまったから
 そうして子供をしかるのがヘタになった子供をしかるのがムズカシくなった
 そんな悪さしたら○○が来てさらって行く・・・と言えない 『人ならぬモノ』への恐れをあいだに立てることができないと・・・「個の価値基準」で倫理道徳を立てて、
 よその子を叱らなきゃなんない・・・これシンドイ。
 直接むきあうのは・・・シンドイ。
 「わたしがわたしの基準で判断してあなたが悪いから、わたしがしかる」と決断できるオトナは・・・まれ。
 角が立つモン。
 共有する『人ならぬモノ』への怖れがあいだに入れば柔らかいのに・・・
 叱れば「あのおっさんはやかましいおっさんや」と直接に向き合うことを覚悟せんなん
 こうして 大人は こどもを 叱るのが ヘタになった
 こどもを 叱るのが ムズカシクなった
 こどもを 叱れなくなった
 よそのこどもを 叱らなくなった
 
   河童 1 |